介護職を続けるなかで、腰への不安が頭から離れなくなった時期があります。
「このまま続けていたら、いつか本当に壊れるんじゃないか」という感覚。でも「腰が痛いくらいで弱音を言ってはいけない」という気持ちもあって、誰にも話せないまま過ごしていました。
この記事では、介護職を約3年経験し、28歳でビルメン(建物設備管理)に転職した私が、腰のこと・身体のこと・転職のことを正直に書きます。「ビルメンが最高だ」と言いたいわけではありません。ただ、選択肢として知ってもらえるだけで十分だと思っています。
私の腰は、介護職を続けることで限界に近づいていた
腰痛を我慢することが、いつの間にか当たり前になっていた
介護職を始めた最初の頃、腰が痛くなるたびに「慣れれば大丈夫」と思っていました。先輩たちも普通に働いているし、腰痛は職種の宿命みたいな空気がありました。
移乗介助、体位変換、おむつ交換。一日に何十回も繰り返す動作が、じわじわと腰に積み重なっていく。
最初のうちは「少し痛い」だったものが、「かなり痛い」になり、「休日も腰が重い」になり、「朝起き上がるのがつらい」になっていきました。
腰痛が慢性化してからは、鎮痛剤が手放せなくなりました。ドラッグストアで売っている湿布を大量買いして、出勤前に貼ってから仕事に行く。その生活が当たり前になっていた。
今振り返ると、それは「慣れた」のではなく「麻痺していた」のだと思います。痛みをやり過ごすことに体が慣れてしまっていた。
腰痛持ちの先輩を見て、10年後が見えた
ある日、10歳以上年上の先輩が腰コルセットを巻きながら介助をしているのを見たとき、胸に刺さるものがありました。
その先輩は介護の仕事をずっと続けてきた方で、利用者さんからも信頼されていました。でも、腰は完全にやられていて、「痛いのが普通になった」と言っていた。
そのとき「このまま10年続けたら、自分もそうなるかもしれない」と思いました。
仕事を辞めたいというより、「体が壊れる前に逃げたい」という感覚でした。介護の仕事自体が嫌になったわけじゃない。ただ、この仕事を続けることで体が消耗し続けるという事実と、それに対して「仕方がない」と言い続けることへの疑問が、少しずつ大きくなっていきました。
介護職での身体的な負担は、経験を積んでも楽になるものではありません。キャリアを重ねるほど介助技術は上がっても、累積された消耗は消えない。介護職を続けることは「成長への投資」である一方で、身体への「消耗」でもある——その両面を正直に見ておく必要があると思います。
腰が壊れる前に転職したいと思っても、動けなかった1年間
転職を考え始めても、何もできなかった
「このままではまずい」と思い始めてから、実際に動き出すまでに1年間かかりました。
転職を考え始めた頃、何をすればいいかがわからなかった。転職サイトに登録してみたものの、「介護士→他業種」という検索でどんな仕事が出てくるのかも想像できなかった。
それより何より、「介護しか知らない自分に、他の仕事ができるのか」という不安が先に立っていました。
資格もない。他業種の経験もない。介護職の経験を「評価してくれる会社があるのか」という疑問もありました。転職活動をするための情報が少なすぎて、どこから手をつけていいかわからないまま、時間だけが過ぎていきました。
「自分には無理かもしれない」という恐怖
動けなかったもう一つの理由は、失敗への恐怖でした。
「転職活動をして落とされたら、自分には本当にどこも行けないとわかってしまう」——そういう怖さがあって、応募するという一歩が踏み出せなかった。
実際に動き出してからの流れを、時系列で書きます。
- 1年目転職を考え始めるが動けない腰への不安が積み重なる。転職サイトを眺めるが、何から手をつければいいかわからないまま時間が過ぎる。
- 動き出し系列系ビルメン2社に応募→2社とも不合格「やっぱり無理か」と投げやりになりかけた時期。
- 方針転換独立系ビルメンに切り替えて応募系列系(大手)より独立系のほうが未経験者を採用しやすいことを知る。
- 合格・入社面接で合格、現在に至る資格ゼロ・異業種からの転職。入社後に資格を取りながら少しずつ評価が上がっていく。
でも今思えば、落ちたのは会社との相性もあったし、最初から「独立系の会社」を視野に入れていれば、もう少し違う結果になっていたかもしれません。転職ルートの話は後でします。
「動けなかった1年間」は無駄だったかというと、そうは思いません。ただ、もし「体が壊れる前に出口があること」を早く知っていたら、もう少し早く決断できたかもしれない——そう思うことはあります。
ビルメン(建物設備管理)という仕事を知ったとき
身体への負担がまったく違う
ビルメンに転職して最初に気づいたのは、腰が痛くならないということでした。
仕事の内容は、ビル内の設備(空調・電気・給排水など)の点検・管理・小修繕です。重いものを持つ場面もゼロではありませんが、介護のように毎日何十回も人を抱えることはありません。
| 項目 | 介護職 | ビルメン |
|---|---|---|
| 重労働(移乗・体位変換) | 毎日何十回も | ほぼなし |
| 腰への累積ダメージ | 大きい | 小さい |
| 仕事後の腰の状態 | 重くなる | 慣れれば気にならない |
| 夜間帯の仕事内容 | 夜勤(利用者対応) | 宿直(設備巡回・待機) |
| 人との接触 | 多い・密 | 少ない |
仕事が終わって帰るとき、「腰が重いな」という感覚がなくなりました。
最初の頃は「本当にこれでいいのか」という気持ちがありました。介護の仕事は、体をフル稼働させている実感があった。ビルメンの仕事は、ある意味「静かすぎる」くらいで、最初は慣れませんでした。
今は宿直勤務(オフィスビル)をしています。深夜に設備の巡回をして、何か問題があれば対応する。誰かが来ることもなく、静かな時間が流れる。その時間が、自分には合っていると感じています。
ただ、「介護の仕事のほうがやりがいがあった」という気持ちもゼロではありません。利用者さんに「ありがとう」と言ってもらえた瞬間は、ビルメンでは代わりになるものがない。失ったものがあることも、正直に書いておきます。
介護職経験は強みにはならないけど、弱みでもない
「介護しかやってきていない自分に、ビルメンができるのか」という不安は、転職前に大きくありました。
実際のところ、介護の経験がビルメンで直接役立つ場面は少ないです。設備の知識もなければ、電気の資格もなかった。最初は右も左もわからないまま仕事を覚えていきました。
でも、「介護職の経験がある人はだめ」という雰囲気もありませんでした。ビルメンの現場には、異業種・未経験から転職してきた人が少なくありません。
私が転職できたのは、独立系のビルメン会社を選んだことが大きかったと思います。系列系(大手ビルメン)は未経験者に対してハードルが高い傾向がありますが、独立系は資格や経験よりも「長く働いてくれる人」を求めていることが多い。系列系で落ち続けていた私が、独立系に切り替えたら受かった、というのが実際のところです。
転職ルートの詳細については転職の選択肢の記事にまとめています。
転職してから気づいたこと、正直に
収入はどうなったか
介護職のときの年収は約300万円でした。現在は約380万円で、+80万円ほど増えています。
| 介護職時代 | 現在(ビルメン) | |
|---|---|---|
| 年収 | 約300万円 | 約380万円 |
| 差額 | — | +80万円 |
| 主な増加要因 | — | 夜勤手当・宿直手当・資格手当 |
ただ、「介護職よりビルメンのほうが収入が高い」とは一概には言えません。独立系ビルメンの給与水準は高くない会社も多く、私の場合は夜勤手当・宿直手当が収入増に繋がっています。
入社してすぐに収入が上がるわけでもありませんでした。資格を取りながら少しずつ評価が上がっていく、という感じです。
「腰が心配な状態を続けながら介護職で働く」か「収入が多少変わっても体を守る選択をする」か——その判断は、人によって違うと思います。ただ、「転職したら確実に収入が下がる」というわけでもないことは、知っておいてもらえると。
腰の心配がなくなった代わりに
転職して変わったことの一つは、「先のことを心配しなくなった」ということです。
介護職を続けていたときは、「このまま体が壊れていくんじゃないか」という不安が常にあった。今は腰への心配はほぼなくなりました。それだけで、ずいぶん気持ちが楽になった気がします。
一方で、「人の役に立っている実感」は薄くなりました。介護の仕事は、直接誰かの生活を支えているという手応えがある。ビルメンは「ビルが安全に動いている」ことへの貢献で、それは大切な仕事ですが、介護のような直接的なやりがいとは違う。
どちらがいい・悪いではなく、自分にとってどちらが長く続けられるかの問題だったと思っています。
まとめ:腰が壊れてからでは遅い
この記事で一番伝えたかったのは、「腰が完全に壊れる前に選択肢を知っておいてほしい」ということです。
腰への不安を抱えながら働き続けることは、体への消耗が積み重なるだけです。「もう少し頑張れば変わるかもしれない」と思って限界まで続けることが、必ずしも正しいとは言えません。
ビルメンが唯一の答えとは思いません。ただ、「身体的な負担が少ない仕事」「未経験・無資格でも入りやすい仕事」という条件で探すと、ビルメンは現実的な選択肢の一つになります。
転職活動に踏み出せなかった1年間の自分に、今の自分から伝えられることがあるとすれば——「出口はある。知っているかどうかだけで、スタートラインが変わる」ということです。
介護職からビルメンへの転職ルートや、転職サイトの使い方については介護からの転職の記事も参考にしてください。


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