ビルメンの宿直には、待機時間というものがあります。夜の中央監視室で、警報が鳴らない限り、特にやることがない時間です。
「その時間に何しているの?」と聞かれることがあります。
この記事では、私が実際に待機時間にやっていること、そしてそれが介護職時代にはほぼ取れなかった時間だったことを書きます。年収300万円から380万円に増えたよりも、この時間が戻ってきたことの方が、私には大きい変化でした。
がんばろうとしなくても、環境が先にあると、結果的に積み上がる。そういう類の話です。
宿直の待機時間は、本当に「ある」のか
私の現場の場合、19時の引き継ぎが終わったあと、翌1時ごろまで約6時間が、警報が鳴らなければ待機時間です。
監視盤を眺めて、巡回を1〜2回はさんで、また戻ってきて、また監視盤を眺める。宿直の夜は、2時間誰とも話さないことがあります。
社内ルールの範囲内で、ということになりますが、勤務時間中に手元のことに集中していい時間がある、というのは、ほかの仕事ではあまりない構造です。
宿直という勤務形態そのものの仕組み(入り→明け→休みのセット・1ヶ月単位で読めること)は、別記事に書きました → 介護職の勤務体系がきつい理由と、ビルメンに変えてわかった違い
私が実際にやっていること
ここから本題です。
報告書・点検記録の作成
まず、日中に見つけた不具合の記録、定期点検の報告書、申し送り事項のまとめ。これは本来の業務です。日中の落ち着かない時間にやるよりも、夜の静かな時間に整える方がミスが減ります。
ただ、報告書作成だけで6時間は埋まりません。
資格テキスト・過去問
次にやっているのが、資格の勉強です。
待機時間は報告書作成や資格勉強に使うことができます。仕事中に勉強できる環境が、自然にあるんです。
ビル管理士・第二種電気工事士・危険物乙4・冷凍3種・2級ボイラー・消防設備士甲4種乙6種。いま勉強しているのは電験3種です。これらは、ほぼ宿直の待機時間で積み上がってきた資格です。
家に帰って疲れて寝てしまっても、明日の宿直でまた1問解けばいい。そのくらいのペースです。
「がんばらなくても積み上がる」勉強の仕組み
ここがいちばん書きたかったことです。
「3ページだけ」「1問だけ」のルール
私は意志が強いタイプではありません。「今日も勉強するぞ」と意気込んで始めたことは、たいてい続きませんでした。
待機時間でも同じで、最初は監視盤を眺めているだけで終わる日がありました。
ある時期から「テキスト3ページだけ」「過去問1問だけ」と決めるようにしました。それだけ。3ページ読み終わって監視盤に戻ってもいい、というルールです。
不思議なもので、3ページだけと決めると、大体それ以上やれてしまう。1問だけと決めると、もう1問解いてみるかとなる。結果として、よく勉強できた日になります。
意欲より、環境が先だった
もう一つ気づいたのは、概要が掴めてきた頃に「待機中にやることがなさすぎて、嫌でも勉強したくなる瞬間」が出てきたことです。
意欲が湧いたから勉強したのではなく、ほかにやることがない環境にいたから、勉強が一番マシな選択肢になった。意欲より環境が先でした。
これは介護職時代の自分には理解できない感覚です。介護では、勤務中に「ほかにやることがない瞬間」は存在しませんでした。
「サボっている罪悪感がない」のが大きい
勤務時間中に勉強できるので、時間を有効活用している感覚になります。サボっている罪悪感がありません。
家に帰ってから勉強しようとすると「休みたい自分」と「勉強する自分」が戦って疲れます。宿直なら、その戦いが起きません。勉強するか、監視盤を眺めるか、の二択だからです。
結果的に、資格は積み上がった
最初に取ったのは危険物乙4と2級ボイラー。次に冷凍3種・第二種電気工事士・消防設備士。少し時間をかけてビル管理士。いまは電験3種を勉強中です。
どの資格も「気合を入れて取るぞ」と意気込んで始めたものではありません。宿直の夜に過去問を1問解いて、解説を読んで、巡回に出て、また戻ってきて続きを読む。そのレベルの淡々とした積み上げです。
意志の強さで資格が増えたのではなく、環境がそうさせたという感覚が、いまも強く残っています。
「勤務中に勉強できる環境」が、心理的な余白を作った
宿直になって変わったのは、勉強の総量より、心理的な余白の方でした。
「いつでも勉強できる時間がある」と思えるだけで、家での時間を「休む時間」と割り切れるようになります。意欲を絞り出す必要がなくなった、と言ったほうが近いかもしれません。
「勉強しなきゃ」を家から消せる
介護職時代は、家に帰ってから勉強しようとしても続きませんでした。日中の消耗が大きすぎたのと、明け休みの頭が「次の出勤日のこと」で埋まっていたからです。
宿直の場合、勉強は「明日の宿直でやる」と切り分けられます。家は休む場所、宿直の待機は勉強する場所。場所と用途が分かれると、それぞれの時間が軽くなりました。
続けるためにルールにしない
逆説的ですが、ルールにしすぎないことが続いている理由でもあります。
「毎日1時間」のような縛りを作ると、できなかった日に罪悪感が残ります。私はその罪悪感が積み上がると、勉強そのものから離れていくタイプです。
「3ページだけ・気分が乗れば続ける・乗らなければ監視盤に戻る」。このゆるさが、結果的に何年も続いている理由だと思っています。
時間が増えたら、人生がどう変わったか
最後にこの話を書かせてください。
休日を、休日らしく過ごせるようになった
転職後、休日に次の仕事のことを考えなくなりました。休日を休日らしく過ごせるようになった、というだけの話なのですが、これが大きかったです。
他のことに、頑張れる感覚
ビルメンは大きな達成感のある仕事ではありません。感謝される仕事でもありません。でも精神的余裕ができたことで、ほかのことにもがんばろうと思えるようになりました。
このブログを書いているのも、その余白から出てきたことです。
収入は増えたが、それより先に「余裕」が戻ってきた
収入は増えました。年収300万円から380万円。約80万円の差です。
ただ、収入が増えたから生活が変わったわけではありません。お金の使い方や日々の暮らしは、ほぼ変わっていません。
大きく変わったのは精神面でした。お金より先に、余裕が戻ってきた、という方が近いです。
まとめ|「楽に生きる」は時間と気持ちの余白
宿直の待機時間に何をしているか、を書いてきました。
結局のところ、待機時間は「自分の時間が、勤務時間の中にある」という珍しい状態を作ります。その時間で勉強した分が、資格になって戻ってきます。
意欲を出して勉強した、というよりも、勉強せざるを得ない環境に身を置いたら結果的に積み上がった。そういう経験でした。
「楽に生きる」の正体は、時間と気持ちの余白だと思っています。逃げじゃなくて、自分に合った環境を選びに行く、という選択肢の話です。
その選択肢を持っていてもいい、という話を、これからも書いていきます。
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